アメリカン・コーヒーの謎

長いので、まず結論を書いておきます。
アメリカン・コーヒーはコーヒーを薄めたものではありません。
しかしアメリカン・コーヒーが薄いコーヒーを意味する場合もあります。

アメリカン・コーヒーは薄めたコーヒーなのか?

先日、ある定食屋で衝撃的なことがあった。

出先で昼食を取るために定食屋に入った。始めて行く店だ。
私はカウンターに通された。
その定食屋のランチメニューにはドリンクが付いている。
選べるドリンクの中にアメリカンが合った。

私はコーヒーをよく飲むけれど、アメリカンも好きなほうだ。
個人の感想だがアメリカンは店によって味のばらつきが少ないと思う。
だから始めて入る喫茶店ではアメリカンを注文する。
喫茶店のブレンドが口に合わない事はあっても、アメリカンがまずいということは今まで無かったのだ。

定食屋のコーヒーが特別美味しいということはまずない。そもそも、そこまで求めてもいない。
でもアメリカンを用意している定食屋のコーヒーなら美味しいのではないか?
いや、待て。よく解らない店でブレンドとアメリカンの二択なら、私はアメリカンを選ぶのだ。
それにもう今コーヒーの味に期待をしはじめているのだから、ブレンドを頼んで普通以下の味だったらがっかりするだろう。
ここはアメリカンにするべきだと判断して、食後にアメリカンをもらうことにした。

定食をたいらげると、カウンターの向こうから女性が「ドリンクをお持ちしましょうか」と聞いてくれたのでお願いした。
見ていると、彼女はコーヒポットからカップに黒い液体を注いだ。
私はそれを見て、アメリカンを作り置きして提供しているのだと思った。

彼女はカップを持って私の方に歩いてくる。
衝撃はその次だ。
カウンターの私が座っていた前にキッチンで使うための電気ポットが置いてあった。
彼女はそのポットからお湯を出してカップに入れた。

そして「アメリカンです」と言って、カップを私の前に置いた。

私はアメリカン・コーヒーは誤認識していたのか?

私は驚きながらも提供された”アメリカン”を飲んだ。
コーヒーの味がした。かなり薄いが、味はコーヒーである。
香り、味ともにがっかりだったがサービスドリンクなら文句をいうほどのことではない。

問題は作り方である。
彼女は黒い液体にお湯を足した。

もしかしてこれはアメリカンではなく、アメリカーノではないか?
アメリカーノはエスプレッソにお湯を足して飲むものだ。

私はたまにスターバックスでアメリカーノを飲む。
スターバックスのホットコーヒーはその時々で豆が違う。
レジの前に今のコーヒーの豆が提示されている。
よく知らない豆のコーヒーが売られているとき、私はハズレを避けるためにアメリカーノを飲むのだ。

つまり作り置きしてあったのはエスプレッソで、彼女はエスプレッソにお湯を足してアメリカーノを作ったではないか?

考えながらしばらくカウンターの中を見ていると、彼女はまたコーヒーカップに黒い液体を注いだ。
そして今度はポットのお湯を足さないで、他の客の前にそのコーヒーカップを置いた。
「ホットコーヒーです。」と言いながら。

私は確信した。
この店では”湯で薄めたホットコーヒー”が”アメリカン”なのだと。

アメリカンの定義

私のアメリカンコーヒーの定義は、”苦すぎないコーヒー”だった。
これはただ経験から来たもので確証が有るわけでは無かった。

そして彼女が作ったものは、”定食屋の独自アメリカン”だと思うことも可能だ。

彼女は客の前で堂々とアメリカンを作っていた。ホットコーヒーにお湯を足して。
でも、あんなに堂々と湯を足していて客から文句は出ないのだろうか。

“定食屋の独自アメリカン”だから仕方がないと思ったけれど、定食屋といえど飲食関してプロである。
もしかして私のほうが間違っているのではないかという疑問が湧いた。

苦すぎない、個性が強すぎないと私が好んで飲んでいたアメリカンは
ただ薄めただけのコーヒーだったのだろうか?
そりゃ薄めれば苦味もクセも弱まるだろう。
もしそんなことなら、知らない店ではアメリカンを頼むという、これまでの私の行動は愚かだ。
知らない店ではまずブレンドを頼み、それが美味しくなければ次はアメリカンを頼むのが正解だろう。
同じものなら本来の味を知った上で薄めるかどうかを判断したら良かったのだ。

あの定食屋のアメリカンが正しいのか、どうしても確認したくなったので
実家が喫茶店を営んでいるという同僚が居たので聞いてみた。
「アメリカンって普通のコーヒーに湯を足したものなんですか?」と尋ねると
「まさか。違いますよ。アメリカンは酸味が強い豆を使うんです。」という答えだった。

とりあえず、よかった。
今まで喜んで薄めたコーヒーを飲んでいたわけではなかった。

家に帰ってWikipediaでも調べてみた。

アメリカン・コーヒー – Wikipedia

通常のコーヒーをお湯割りにしたものを「アメリカン・コーヒー」と認識している人達が見られるが、こうした見方は正確な認識とは言えない。

しかし次の文章が気になる。

アメリカン・コーヒーとは、浅く焙煎したコーヒー豆で入れたコーヒー[1]。アメリカンとも呼ばれるがアメリカーノとはまた違ったコーヒー。和製英語で「アメリカン」は「濃度が薄い」という意味に拡大してきた[2]。

アメリカンという言葉に「濃度が薄い」という意味があるのなら
薄いコーヒー=アメリカンは合っているのではないか?
注釈2:

名古屋周辺などで食される台湾ラーメンには、辛さが柔らかい「台湾ラーメン・アメリカン」なる調理法が存在する。

あの定食屋のアメリカンは「濃度が薄い」という意味だったんだな。

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